論文番号 96

著者名 山下淳平・Mohammad Dibajnia・渡辺

論文題目 不規則波浪下でのシートフローによる漂砂量算定式

討論者 池野正明(電力中央研究所)

質疑

 不規則波と規則波における漂砂量外力の最も異なる点は、不規則波では長周期波成分(サーフビート)が存在することである。すなわち、沖ではセットダウン波があり、砕波帯内では、新たな長周期波が発生し、増幅しながら砕波帯内を伝播する。著者らの振動流実験では、この長周期波成分を無視して実験しているのですか。

 そうだとすると、この実験結果から「不規則波と規則波との差異により漂砂量が変化することはない。」との結論が、さらに長周期波を加えることにより、くつがえる可能性があるのではないですか。

 上記から、現 Dibajnia らの提案式を波別解析による規則波の組合わせとして用いることにも疑問が生じます。

回答

 本研究では長周期波成分を除いた不規則な流速波形を用いて振動流実験を行っています。 漂砂量がスペクトル型によらないという結論は、このように短周期波のみを扱った場合に得られるもので、本研究成果を用いて地形変化を計算する場合には長周期波の影響を取り入れる必要があります。

 DibajniaWatanabe の漂砂量算定式を長周期波が含まれている不規則な流速波形にも同様に適用できると思われます。

 

討論者 出口一郎(阪大、工、土木)

質疑

 一般に(不規則波浪場においても)砂漣上で顕著な浮遊砂が生じている場合のnetの漂砂の移動方向は、流速や砂漣形状の非対称性等のために沖向きになると考えられる。これに逆流が存在する場合は、さらにこの傾向が助長されます。しかし、図-7(P479)に示される実験結果は、逆流で砂漣が存在するにもかかわらずnet on shoreになっています。(計算結果は沖向きである。)この理由(岸向きとなる)は、振動流場特有の現象によるものなのでしょうか。

回答

 本実験で形成された砂漣の波高は 1-1.5 cm 位と小さく、通常の砂漣上で見られる顕著な浮遊砂は見られなかったが、逆流の存在にも関わらず正味漂砂量が岸向きになった原因は不明です。 本振動流装置特有の現象とも考えられます。

 

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