論文番号 56

著者名 越村俊一・今村文彦・高橋智幸・首藤伸夫

論文題目 境界波としての津波の挙動特性とその数値解析

討論者 (株)エコー 柴木秀之様

質疑

 (1)屈折誤差の評価の結果,誤差の大きさにより計算される津波波形はどの様に変化するか.

回答

 (1)本研究においての屈折誤差評価は波向線の海岸への到達位置についての理論解と数値解の誤差に着目したものであり,波高に関しては考慮していない.それは,本研究では陸棚上を伝播するエッジ波が屈折現象に支配されているという仮定から,北海道南東部を伝播するエッジ波の屈折現象の再現性を検討することをその目的としているからである.従って,当質疑については著者の考えを述べさせていただく.

 一般に,数値計算において空間格子が粗くなれば,対象としている領域,特に浅海域の地形近似度が粗くなり,空間格子には実地形における水深を平均化した値が入る.また,計算波高は平滑化され,局所的な津波の挙動は表現されにくくなる.さらに,格子が粗くなることで屈折現象の再現性も低くなり,境界波としての波形の再現は困難になる.

質疑

 (2)観測波形に波群(うなり)が見られる場合,直接深海から浅海へ伝播する波列と境界波の波列はどのように重なり,波群が形成されるか.

 

回答

 (2)深海から到達する波列の伝播経路は境界波のそれよりも直線的なものになるから,観測点においては深海を伝わる直接波のほうが境界波に比べ早く到達する.従って,一般的に深海を伝わる直接波と境界波の波列は重なることはない.一方,直接波により励起された湾内の固有振動が長時間続き,後から到達する境界波と重なる場合は考えられるが,それは湾内の局所的な地形に左右されるために一概に決定することはできない.

質疑

 (3)空間格子10分(18km)の計算により,境界波の挙動を再現することは可能か.

回答

 (3)本研究においては,陸棚上を伝播する境界波(エッジ波)の再現性の検討を行い,北海道南東部におけるエッジ波再現に必要な空間格子間隔を求めた.当質疑において言及された空間格子10分の計算で求められた境界波は海嶺上を伝播したものである.海嶺を含む領域は一般に水深が深く,浅海域における島々等を含まないために,空間格子の粗さが地形近似度に与える影響は陸棚を対象とした場合に比べ小さいといえる.従って,海嶺上を伝播する津波の再現に関しては比較的大きな格子間隔でも再現可能である.

 

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