論文番号 53

著者名 山下隆男・別宮 功

論文題目 台風7010号の土佐湾における高潮の追算

討論者 村上和男(港湾技研) 

質疑

 (1)2層モデルの層厚,密度差,内部摩擦係数?

回答

 (1)全て本文中に記載してある。

 層厚:上層厚50mに固定,

 密度:上層1.02,下層1.03(訂正:本文中では上,下層が逆になっている。)

 内部摩擦係数:境界面での流速の2乗則での応力係数2×10-5

質疑

 (2)感度解析の有無

回答

 (2)試行錯誤的にはしているが,系統的な解析はしていない。

質疑

 (3)観測値と単層モデルによる計算値との差100cm。2層モデルにすることにより,単層モデルの高潮ピークの計算値より20cm上昇した。流れの鉛直分布を考慮しても,実測値からはなお80cmの差がある。これが波浪によるセットアップであろうとすることは乱暴ではないか?

回答

 (3)大阪湾の高潮の追算では,単層モデルでも2層モデルでも,風の場が再現できるモデルを使うと,良いシミュレーション結果が得られる。土佐湾の高潮にこれを適用し,モデル台風で最も強い風速場を与えても観測値を100cm下回る追算値しか得られない。これは外洋に面した海域の高潮の観測結果には砕波によるセットアップが入っているが,計算では考慮されていないためであろうと思われる。すなわち,土佐湾の7010号の高潮には砕波によるセットアップを考慮しなければならないというのが通説になっていた。

 1990年に Hearn&Holloway が,オーストラリア北西部の陸棚上での多層モデルによる高潮の数値計算は単層モデルの推算値の2倍近い水位上昇となることを示したので,本論文では多層モデルで土佐湾の7010号の高潮を追算したときにどのようになるかを確認したかった。その結果が,20cmの水位上昇に止まったので,80cmの差は砕波によるセットアップであろうと結論した。実際に,砕波によるセットアップを考慮した高潮の数値モデルで確認したわけではないので,この意味では乱暴であると言われても仕方が無い。

 

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