論文番号 261

著者名 河田恵昭・小池信昭

論文題目 津波の伝播・氾濫特性に基づくハザードマップに関する研究

討論者 京大・防災研

質疑

 1)ハザードマップをインターネットで示し住民に避難のための情報を提供したいとのことですが,発表には充分気を付けて下さい.誤った情報は避難者を混乱させ災害を増大させることも考えられます.断層モデル,氾濫モデル等の検討を充分行い,巨大災害研究センター(又は防災研)さらには土木学会などの合意の結果として発表に耐え得る情報まで質を高める努力をして下さい.

 2)136度に震央を持つ断層が有意なものかどうかを再検討する必要があるのでは?

回答

 1)著者らが用いている津波数値解析モデルは,誤りがあったり,精度を高める必要があるごとに改良しています.現象を完全に再現するモデルはないと考えられますし,工学という観点からは完全でないものであっても社会に役立てる必要があると考えます.したがって,著者らは今後,津波数値解析モデルの信頼性解析などを行い,計算結果がどの程度の信頼性をもっているかを検討する必要があると考えています.

 2)過去の地震の断層モデルとは違う場所で断層がずれる可能性があるかどうかは,地震学のメカニズムからも説明できないと考えられます.したがって,著者らが示したのはあくまでも統計的な解析です.しかし,論文の表現に適切でないところがあったことは確かですので,今後それが統計的なものであることを明示していくつもりです.

 

討論者 田原測量設計事務所 田原康司

質疑

 1)近年の紀伊半島に於ける最大の地震津波は,昭和19年12月7日の東南海道地震津波(M8.4)であるが,戦時中の為未発表の件も多い.検討したことがあるか,あれば聞かせてほしい.

 2)南海地震津波の湯浅湾における第1波目の到達時間は,運輸省及び和歌山気象庁との調査の差が20分以上あるが現実はどうかお教え願います.

回答

 1)紀伊半島の西側において1946年の南海道地震津波より1944年の東南海道地震津波の方が大きかったという事実は,現在のところ確認していません.したがって,検討したことはありません.

 2)まず,想定地震の断層モデルをどうするかによって到着時間に大きな差がでることが考えられます.著者らがおこなった数値計算結果,断層モデルの位置によって到達時間は大きな差がでることが分かっています.したがって,著者らは断層モデルを南海トラフ沿いに動かして数値計算を行うことにより,最短で到達する地震断層モデルの位置を明らかにしたわけです.また,ある地点の水位の時間的変化がある場合,どこで第1波が到達しているかを判断する方法によっても,到達時間に差がでることが考えられます.通常は,地震発生から津波の第1波目のピークまでの時間をとって到達時間とする方法が一般的ですが,今後到達時間の決め方を統一する必要がででくると考えられます.

 

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