論文番号 232

著者名 磯部雅彦

論文題目 米国のミティゲーションの動向と日本への適用における課題

討論者 河田恵昭(京大,防災研)

質疑

 わが国の環境アセスメントは事業アセスメントであって,もし計画アセスメントができる状況になった場合,ミティゲーションによって計画をやめさせることはできるのか.

回答

 アメリカの場合,ミティゲーションの分もコストに加えることで便益と費用を比較し,事業の成否を判断することになります.計画アセスメントの実施と直接結びつきませんが,ミティゲーションが制度化されれば計画を断念することも生じるでしょう.しかし,自然の外力条件や社会資本の整備水準の異なるわが国において,制度の導入にあたっては防災や開発との間の優位性や重み付けの問題,さらには単独の環境創造事業の推進などとの関連を考慮する必要があります.

 

討論者 柴山知也(横国大,建設)

質疑

 ミティゲーション制度を発展途上国に適用する場合,環境の機能をいくつか選びとり,代償措置を限定的に運用する可能性があります.このような手法は本来のミティゲーションの趣旨に合致するものでしょうか.

回答

 ミティゲーションにおいて,環境影響を回避,最小化するのは従来の環境アセスメントにも含まれる概念であり,それでも残る環境悪影響に対して代償措置を行う点に特徴があると考えられます.その点では,限定的な代償措置というのもミティゲーションの趣旨と整合するものと言えましょう.ミティゲーションを行うためには,それによって維持されるべき環境レベルを規定することが必要であり,それは国や社会状況などにより時空間的に非一様であると思われます.

 

討論者 上月康則(徳島大,建設)

質疑

 wetland以外の場所でミティゲーションを行った例はありますか.

 ミティゲーションのような手法は米国だけのものでしょうか.ヨーロッパなどでの例があれば教えて下さい.

回答

 アメリカのミティゲーションにはwetlandの減少が深く関係していることは論文で述べたとおりですが,カリフォルニアのサン・オノフレ原子力発電所の建設に際しては,ジャイアントケルプの藻場がミティゲーションの対象となっています.これは今でもモニタリングを行い,追加的措置について協議中とのことです.

 また,ヨーロッパでは各国ごとの沿岸域管理が紹介されていると思いますが,ミティゲーションを制度として取り入れているのは知りません.カナダでは環境アセスメントに関連して調査が行われています(三本木健治,レファレンス,1994.10pp. 4-44).

 

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