論文番号 228

著者名 二瓶泰雄・灘岡和夫

論文題目 GAL-LESモデルによる連続成層中のBubble Plumeに関する数値解析

討論者 運輸省港湾技術研究所海洋環境部 鶴谷広一

質疑

 貧酸素化の改善について。成層化が強くなると上下層の混合が抑制されて貧酸素化が起きる。本研究では、密度勾配が強くなると混合が小さくなるように見えるが、どうなのか。

回答

 どの領域の混合を取り扱うかにより、混合量は大きく変化する。すなわち、密度勾配が小さい場合には、底面境界から放出された気泡は上端境界まで到達し、循環流の規模が計算領域全体に及ぶ(pp.1138、図ー2参照)。それに対して、相対的に密度勾配が大きい場合には、気泡は上端まで到達せずに、底面から30cm付近で大規模渦が形成されて、その近傍で密度分布が初期状態から変化していることが分かる(図ー3参照)。このようなことから、どちらの計算ケースの方が密度混合量が増大するかは、その定義により大きく変化する。

 

討論者 運輸省港湾技術研究所 村上和男

質疑

 計算ケースの密度差、大・中・小をやられているが、このケースでは現地でどのような状態を考えているか?

回答

 本計算の計算条件は、浅枝・Imbergerの実験条件になるべく合うように設定しているため、現地スケールでの状態は想定されていない。しかしながら、このような流動パターンは現象のスケールに関係なく、気泡混入フラックスと密度成層強度を取り入れたパラメータで決まっていることが浅枝・Imbergerの研究より明らかになっていることから、現地スケールでも本計算結果で得られたものと同様な現象が得られることが予想されるが、そこまでは検討していない。

 

討論者 鹿島技研 田中昌宏

質疑

 1.密度勾配があると乱れの非等方性が強くなるが、そのモデル化はどのようにしているか?

回答

 本研究で採用しているLES(Large Eddy Simulation)におけるSGS(Sub-Grid Scale)乱れに関しては、密度効果による非等方性の効果は取り入れられていない。というのは、このような密度成層下でのLES計算例は数少なく、そのようなモデル化が皆無であること、さらに、本研究の目的が著者らが開発しているGAL-LESモデルの幅広い応用性を検証するための一環で行われているためである。なお、GSGrid Scale)成分に関しては、直接計算しているので、密度効果を含めた様々な成因による乱れの非等方性の効果を直接モデル化する必要はない。

質疑

 2.溶存酸素の変化予測が将来的に可能か?

回答

 2.基本的には、海底面や海表面などでの溶存酸素フラックスをどの程度取り扱うかに依存するが、単なるシンク・ソースとしての取り扱いなら、現状のモデルでも変化予測は可能である。また、本モデルでは取り入れていないが、気泡粒子の周囲流体との物質輸送過程もモデル化することは原理的には可能であるので、将来的には、環境予報シミュレーションにも本モデルを適用する予定である。

 

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