論文番号 192

著者名 増田 光一、佐竹 寛之、高村 浩彰、宮崎 剛

論文題目 津波による沿岸域に係留された浮体式構造物の運動と係留策張力応答の簡 易推定法に関する研究

討論者 高山 知司(京大、防災研)

質疑

 実験に用いた津波の周期が実際より短いのではないか。構造物に比して波長が短い影響が実験結果に出ているのではないか。

ソリトン分裂後の波(周期10〜20sec)としては実験波の周期が長すぎる。

回答

 実験に用いた津波の周期が実際のものと比較して短いのではないかという指摘に関しては、正にその通りである。著者らの研究は、最終的には津波作用下の浮体式構造物の運動応答並びに係留索張力応答の解明を目指すものであるが、本論は、津波を想定した実験及び数値解析を行う上で、その第一段階として、実験での再現が可能であり、津波同様に長周期の非線形波である孤立波が作用する浮体の運動応答に着目した。厳密な意味では、津波を入射波と考えた現象の再現とはなってはいないが、浮体式構造物の運動応答に多大な影響を与えると考えられる周期帯における検討は行えているものと考える。実現象に即した入射波条件に関しては、著者らが実験と並行して進めている数値解析手法の適用の際に検討したいと考えている。

 

討論者 岩崎 敏夫

質疑

 津波の周期に比して小さい周期でないかという疑問については、ソリトン分裂の理想化であれば非常にすばらしいと思う。

 

討論者 池野 正明(電力中央研究所)

質疑

 津波評価に対して、浮体の運動変位を微少とし、線形理論による付加質量等を用いることの影響が粘性力を過大に与える一要素となっているのではないですか。

回答

 著者らは、本論において津波中の浮体式構造物の運動応答を検討する際に、平均位置周りの運動を論じる線形理論を適用している。浮体式構造物の設置海域をある程度沖合と想定すれば、津波の波高もさほど大波高とはならず、線形理論の適用が可能であると考える。また、より高度な理論に基づく数値解析手法を採用することは、実際の浮体式構造物の設計を著しく困難なものにしてしまうと考える。それに対して線形理論に基づく手法は、より実用的な手法であると考えた。著者らは浮体の運動を解析する上で、入射波による浮体の流体力係数として浮体固有周期における値を用い一定値としているが、このことが過大な粘性抗力を与える原因とは考えない。浮体全長に対して入射波の波長が充分に長いと考えると流体力係数の周波数依存成分の影響は小さいと考えられる。また、確かに一般的に用いられる抗力係数と比較して大きな値の係数を用いてはいるが、実験値との整合を図るために同定した結果である。実際、模型実験において、模型後端での渦の剥離や模型底面での気泡の発生など、浮体に大きな粘性抗力が作用している可能性を示す現象が認められており、本論で用いた係数はある程度の妥当性を有するものと考える。同定の結果、抗力係数が大きな値となった原因としては、粘性抗力の他に、今回解析に用いた運動方程式中では考慮されていない何らかの非線形項の影響も考えられるが、これについては今後実験および数値解析の両面から検討していきたいと考えている。

 

討論者 小林 昭男(大成建設、技研、海洋水理研)

質疑

 発表中のOHPの係留力について手法1,2と実験値の位相が違っていたが、それはなぜか。

回答

 発表で用いたOHP中のグラフに関して、手法1と、手法2および実験値の位相に相違があるという指摘であるが、手法1の計算に関して計算結果の出力方法に若干の誤りがあったためである。実際には、手法1、手法2と実験値の位相には相違はないという結果が得られている。

 

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