論文番号 191

著者名 池野正明・松山昌史

論文題目 津波作用下における浮体構造物の非線形挙動解析

討論者 大成建設技研 小林昭男・織田幸伸

質疑

 1)図−2における実験と計算の違いは粘性減衰と考えてよいか.

 2)図−7には,粘性減衰を取り入れているのか.

 3)係留系のヒステリシスは考慮しているのか.

 4)今後,3次元計算に拡張していく際には,粘性抵抗力の影響をどのように考えれ ばよいのか.

回答

 1)強非線形計算と実験との共振周期付近での差異は,粘性減衰をゼロとして計算しているためであると考えています.

 2)図−7(図−2,5,6も)の計算では,粘性減衰をゼロとしています.

 本来,粘性抵抗力は抗力の一種と考えられますから,レイノルズ数の関数となります.すなわち,対象波の波高や周期に依存します.著者が予測対象とするのはあくまで津波ですから,実規模で30-60分の周期が対象です.津波(もちろん水平・鉛直無ひずみ縮尺)の模型実験ができれば,これにより抗力を同定できますが,現時点では実験が困難なためやっていません.ただあるのは,過去に実施した波浪を対象とした実験結果だけです(図−2等).これに基づき,粘性減衰を設定することもできますが,津波のように周期が長くなると抗力の働きは比較的小さくなると考えられます.その際,これを用いてしまうと,津波計算の予測結果を過小評価してしまう恐れがあります.これを避けるために,粘性減衰をゼロとしました.

 3)本論文の主題からはずれますので,紙面の都合上詳細説明は省略しましたが,係留系の非線形なヒステリシスロスも考慮して計算しています.詳しくは,2番目の参考文献に挙げた電中研報告をご参照ください.

 4)取り入れるべき抵抗力として,浮体没水隅角部の渦粘性やwave drift damping,係留系の摩擦力等,様々ありますので,6自由度全ての運動方程式に,今後の模型実験等で同定した結果を導入できるように工夫しておいた方がよいと思います.実際,私も本手法を3次元に拡張する場合には,そうするつもりです,

 

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