論文番号 165

著者名 半沢 稔、周 遠強、杉浦 淳、佐藤 弘和

論文題目 消波ブロックを用いた人工リーフの機能・安定性に関する実験的研究

討論者 合田 良実 (横浜国大)

質疑

 図ー10について3点質問をいたします.

 1)R=0のときのNs値から判断すると一様斜面の安定重量よりも大きくなりそうですが、どのように考えられますか?

 2)R/H1/3の増加に伴うNs曲線の右上がりのカーブが急すぎるように思われます.

 3)砕波帯内に使うときH1/3は砕波減衰を考慮した値なのかあるいは沖波波高なのでしょうか?

回答

 1)ブレブナードネリー式ベースで整理した実験結果からはR=0の時の被害率1%以下に対応するNsは2.3となります。

これをKD cot α=Ns 3 の関係からハドソン式ベースに機械的に置き直しますと,斜面勾配とKD 値の関係は以下のようになります。

       斜面勾配    KD

       1:4/3   9.1

       1:1.5   8.1

       1:2     6.1

ご指摘のとおり従来,水面上に顔を出した形の一様勾配斜面に対してはハドソン式を用いて算定しており,テトラポッドでは設計上被害率0〜1%に対してKD=8.3を使用しております。従って,斜面勾配が1:4/3〜1.5という施工実績の多い条件に対しては,人工リーフとして使用した場合および,一様勾配斜面の場合ともに同様の結果を与えるものと捉えております。ただし,勾配が緩くなった場合にはご指摘のとおり一様勾配斜面の場合よりも大きな重量が必要になる場合もあるかと思います。

 ハドソン式では水面上までの一様勾配斜面を対象としており,静水面付近のブロックがクリティカルになり,斜面勾配の効果がとりこまれています。一方,人工リーフのような場合には天端法肩がクリティカルになり,斜面勾配の効果は結果的に現れない傾向と考えられます。人工リーフに対してブレブナードネリータイプで整理したのもそのためです。

 2)R/H1/3 の増加に伴うNs の増加は,例えば,平型ブロックであるエックスブロックに対する結果1)に比べると急であるかと思います。これは, ブロックの形状によってR/H1/3に対する感度が違うためと考えられます。

テトラポッドを人工リーフに用いる場合には,R/H1/3 に対するNsの変化が大きい点を留意して安定重量の算定をすべきと考えています。

 3)図−10で整理したNs の算定図においては,H1/3は堤体の沖側法肩位置での通過波高としています。(図−1参照)

従って,沖波ではなく堤体位置での波高,つまり,砕波帯内では砕波減衰を考慮した波高としています。

 

討論者 高橋 重雄 (港研)

質疑

 図ー10において、右上がりのNs線になっているが、R/H1/3がある値で最も危険になる可能性がないのでしょうか?

 通常の捨石の場合より、空隙による砕波の乱れの低減によってより伝達率が小さくなるような効果はないのでしょうか?

回答

 私どもの研究成果に従いますと,今回発表したテトラポッドも以前発表したエックスブロック1)もR=0つまり,天端上水深がゼロの場合が最も危険という結果になっております。ご指摘の条件が,わずかに天端が水面上に顔を出した場合を指しておられるとすると,今回の結果から直接にお答えすることはできませんが,例えば,捨石に対して研究された竹田ら2)の検討結果によっても,静水面から上となった場合の安定性はR=0の場合とほとんど変わっておらず,実用的にはR=0が最も危険な条件として捉えておいても差し支えないのではないかと考えています。

 人工リーフによるエネルギー減衰は主に,人工リーフ上での砕波および,堤体内部を透過する流れの乱れによることは良く知られたことであります。また,この減衰と,反射波によって沖に戻っていくエネルギーの残りが伝達波のエネルギーになるわけです。捨石とテトラポッドをどちらも今回のテトラポッドで対象としたものと同様の全断面で積んだ場合を考えると,堤体内部の空隙は捨石の方が小さく縮流や粗度によるエネルギー減衰は必ずしもブロックの方が大きいとは限らないと思われます。

 残念ながら同一条件での石との比較実験を実施していませんので,確定的なことは申し上げかねますが。

 

討論者 池野 正明 (電力中央研究所)

質疑

 捨石に比べて、テトラポッドはかみあわせも期待できるので所要重量(図ー10関連)が軽減できるのではと考えられるが、実験結果はそうなっているのですか?

回答

 人工リーフについて,捨石の安定性に関して不規則波ベースでの研究例としては,竹田ら2),中山3)の研究があります。竹田らはKD 値で整理しており,例えば,R=0に対してはKD=2程度,中山はNs で整理しており,やはり,R=0に対してはNs =1〜1.5程度としています。竹田らの結果から斜面勾配1:3と仮定するとNs=1.8となります。この点で言えば,先の合田先生へのお答えの記述にあるテトラポッドの安定性と比較すると明らかに,テトラポッドの方が安定性は高いものと判断されます。

 なお,比重を含めた必要重量の点から考えると,以下の通りです。

 H1/3 =5mとすると,

  テトラポッド 比重2.3, Ns =2.3 → W=12.6t

  捨石     比重2.65,Ns =1.5 → W=25.2t

 H1/3 =2mとすると,

  テトラポッド  → W= 0.8t

  捨石      → W= 1.6t

 重量から見てもテトラポッドの方が小さなもので済みます。

参考文献

 1)浅川 勉,佐藤弘和,口ノ町誠,野口正昭(1992):人工リーフ被覆材の安定性に関する実験的研究,海岸工学論文集第39巻,pp.656−660

 2)竹田英章, 菊地聡一,木村克俊,笹島隆彦,水野雄三(1994):不規則波による潜堤被覆材の安定に関する研究(第2報),海洋開発論文集第10巻,pp.183〜188

 3)中山哲嚴(1993):人工リーフの水理特性及び被覆材の安定に関する実験的研究海岸工学論文集第40巻,pp.816−820

 

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