論文番号 159

著者名 吉田明徳 村上啓介 山城

論文題目 多成分不規則波と没水構造物の非線形干渉解析

討論者 磯部雅彦(東大,土木)

質疑

 砕波の影響を精度よくとりいれることが今後の課題とのことであるが、砕波現象のような強非線形現象を周波数領域で解析するのは困難であると感じられる。どのように今後進めて行く見通しがあるのか。

回答

 砕波の発生を数値計算自体で判定しようとすると、周波数領域の解析では困難であることは、ご指摘の通りです。しかし、砕波の発生を数値計算(時間領域)で判定したとしても、砕波の効果を評価するには、砕波の機構が理論的に数値計算に取り入れられない限り、便宜的な方法によらざるを得ない点では、周波数領域であれ時間領域であれ同じです。

 周波数領域での解析は弱非線形の現象に限られますが、利点として常に安定した数値解が得られることが挙げられます。構造物近傍での渦や砕波によるエネルギ−損失の効果を、便宜的であれ解析に考慮することによって(例えば、構造物近傍で流速の2乗に比例する損失係数を導入するなど)、非線形干渉による入射波スペクトルの変形が推定できれば、周波数領域の解析は、強非線形現象を生じる構造物に対しても、有用な解析手法を与え得ると考えています。しかも、より普遍的な平面波浪場での、構造物と不規則波との非線形干渉解析への拡張を考えると、時間領域での解析は開境界処理一つを取っても極めて困難で、周波数領域での解析法の方が現実的ではないかと考えます。

 

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