論文番号 156

著者名 村上啓介 ,入江功 ,上久保祐志(九州大学)

論文題目 非越波型防波護岸の護岸天端高さと作用波圧について

討論者 合田良実(横浜国立大学)

質疑

(1)強大な波圧は衝撃的というよりもある程度の作用時間を持つのではないでしょうか.したがって,得られた波圧強度はそのまま設計値として使用する必要があるのではないでしょうか.

(2)実験としては興味深いものがありますが,現実の設計断面への選択には大きな問題があります.例えば,(H1/3)0=4mT1/3=7sh=8mくらいの湾内域の条件を対象として設計するとどのようになるのか提示して見てください.設計はHmaxに対して十分に非越波が条件です.

回答

(1) 最大波圧が生じる水面付近での作用波圧の時間波形は,鋭いピークを持つスパイク状の波形を呈しており,その作用時間も非常に短く(波形の立ち上がり点から波圧が減衰するまでの時間間隔は実験ケースによってばらつきはあるがおよそ10ms以下程度),いわゆる典型的な衝撃波圧に見られる波形を示しています.このように,最大波圧値は大きいものの,その作用時間は非常に短いことより,実験で得られた波圧値はそのまま設計値とはならないと考えられます.

(2)質問にある波浪条件とは異なるが,設置水深h=5.5m,波高H0=5mの場合と,設置水深h=11m,波高H0=10mの場合について,非越波条件を満足する護岸断面の試設計をおこなっています.護岸は,鋼板で作製した円弧状の中空ボックス内部に中詰砂を充填し,その表面をコンクリート巻きにした円弧状構造とし,護岸背後には盛土がある場合を想定しています.また,作用外力として波圧のみを考慮し,波圧値は実験結果(消波工あり)より換算して与えました.護岸内部の鋼板に生じる応力計算より,前者の波浪条件の場合,円弧状の護岸厚さ250cm,内部鋼板厚さ8mm,後者の条件では,円弧状の護岸厚さ600cm,内部鋼板厚さ25mmで波浪外力に十分耐えるとの結果を得ています.また、施工コストは、従来の直立消波護岸と比べておよそ3割り増しとの試算を得ています。

 

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